最高裁判所第二小法廷 昭和23年(オ)173号 判決 1950年6月23日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人等の負担とする。
理由
上告代理人弁護士馬淵分也の上告理由第一点について。
訴訟代理人のあるときは、訴訟書類は、その代理人に送達するのを通例とするけれども、この場合においても当事者本人に対する送達を防げるものではない。原審において、上告人(控訴人)等に訴訟代理人があるにかかわらず、判決が、訴訟代理人に送達されず、上告人等本人に送達されたことは記録上明らかであるけれども、(原審仙台高等裁判所における訴訟代理人は遠く鳥取県米子市に在り、しかも、同裁判所の所在地において、送達を受くべき場所等の届出をせず、上告人等は近県に住所を有していた為めに、同裁判所は、その判決を訴訟代理人に送達せず、便宜上告人本人等に送達したものと思われる。)それがために右送達の効力を防げるものでなく、又これを以て所論のように代理人の訴訟行為をする権限の行使を阻止した違法あるものとすることはできない。論旨は理由がない。
同第二点について。
現下、わが国において、所論のような事情があるとしても、それがために、訴訟書類の送達は、凡て、発信主義に依らなければならないとする法的根拠はなく、論旨は採用の限りでない。
同第三点について。
所論は、要するに、原審が民訴三六六条、三八三条に則つて、口頭弁論を経ず、事件の本案について、審理を為さずして上告人等の控訴を却下したことを攻撃するに帰着し、結局、訴訟法上の違法を主張するに過ぎないのであつて、憲法違反の問題を生ずる余地のないものである。しかして、原判決に所論のような違法のないことは第一、二点について説示するところによつて明らかである。論旨は、また、これを採用することはできない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従つて、主文のとおり判決する。
右は、全裁判官の一致した意見である。
(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)